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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.2 ・・・待っていたのは、とんでもない家だった  (ライクス)- 2017.12.17(日) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.2 ・・・待っていたのは、とんでもない家だった  

ライクス

2017.12.17(日) 10:00

 「携帯電話を車の中に置き忘れちゃって、ごめんねぇ」

 公衆電話をかけてもつながらず、半ば呆然としていた私の前に、さわやかにあらわれたのが、ルーミーこと我がルームメイトだった。

 写真で見たままの容貌だ。よかった。

 インターネットの結婚紹介サイトでは、よく「写真詐欺」があるという。実物とはかけ離れた、いい写真を使う女性が、とても多いのだそうだ。かつて取材した、婚活サービス会社の担当者が、言っていた。

「男性からのクレームで、一番多いのが、『現れた人が写真と全然違った』というものなんです」

 だから彼女の写真がとても昔のもので、実はものすごい巨漢だとか、写真よりずっと老けていたりして、すれ違っても分からなかったらどうしよう、と密かに心配だった。

 一緒に暮らす分には、巨漢でも老けていてもかまわない。でもいずれバレる相手に対してでさえ、そうでないよう、過度に自分を加工する精神の持ち主には、警戒が必要だと思う。

 カラカラと笑う彼女に促され、赤いフォードの小型車に乗り込んだ。走るとすぐさま、私はシアトルの町並みの美しさに、息をのんだ。
左手には青い海、ヨットにかもめ、右手には緑あふれる丘の上の住宅街。

 あのイチローが活躍する、セーフコフィールドもこの目にした。

 ようやく来たんだ。

 まだ何もしていないのに、ルームメイトと空港で落ち合って、車に乗せてもらっただけなのに。

 妙な感慨が、湧き上がった。

 そもそも私が、アメリカにいつか留学したい、と最初に思ったのは、高校生の時だった。高校に、学年で1人、1年間の交換留学に行けるというプログラムの案内が来た。

 面白そう、行ってみたい。そう思ったけれど、音大受験を控えていた私は、「1年もピアノが弾けないんじゃ、無理だ」とあえなく諦めた。申し込みさえしなかった。その消極性を、しばらく後悔した。

 20代の末にも、一度、留学したいと思った時期があった。今度は、奨学金制度に応募した。けれどもあえなく書類審査で敗退。思えば、会社での仕事に行き詰まり、現状から逃げ出したい、ただそれだけの留学志願だった。思いつきのような課題テーマを英語で書いて、提出した。「残念ですが」の通知に、その甘さを見透かされた気がした。

 だからしいていえば、27年越しの悲願達成、といえる。今回は、20代の時と同じ奨学金制度に応募した。合格通知を受け取った時には、ようやく、「行ってよろしい」と神様にハンコをもらったような気がした。
 
 30分ほどドライブした所で、家に着いた。小高い坂の上の、芝生におおわれたさらに小高い丘に立つ、煉瓦の煙突のそびえるブルーの家。

 グーグルマップで何度も何度も検索して眺めた(プライバシー問題は懸念される所だが、いざ使うと便利なものである)、あのかわいい家だ。本物だ。

 ところが、現実というものは、いつも思いも寄らないハプニングで人生を彩ってくれるもの。

 ドアを開けると、待ちかまえていたのは、驚愕の光景だった。

 とてつもなく散らかった、リビングルームであった。

・・・続く




フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209499

下巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209500

問題少女 第1巻〜最終巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/215228


株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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