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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.5・・・モノの多さが諸悪の根源とはいうけれど(ライクス)- 2017.12.20(水) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.5・・・モノの多さが諸悪の根源とはいうけれど

ライクス

2017.12.20(水) 10:00

 よく眠った。目を覚ますと、一瞬、あれ、なぜ天井が白いんだろうと疑った。東京で住んでいた築年数不詳のあの古家の、汚れた茶色の天井はどこへ。

 ここがアメリカなのだと悟るまで、30秒はかかっただろう。ルーミーはもう起きていた。

 「ニワトリの鳴き声と共に起きて、彼女たちを小屋から出さないといけないから」。

 勢いよく靴音を鳴らして、リビングを歩いていた彼女は、私を見るなり言った。

 朝から元気一杯だ。4羽いるニワトリは全部がメス。総称「ガールズ」。でも実はそれぞれに、「エリザベス」とか「メグ」という名前がついている。ルーミーは全員を見分けているらしく、「ハーイ、メグ」とかいって声をかけていた。

 ムツゴロウ王国か。ニワトリ小屋当番、いずれ私にも回ってくるのだろう。

 それにしてもリビングはすごい。おもちゃ箱をひっくり返したようという表現が、これほどしっくりくる家は、なかなかない。20畳の部屋の、大おもちゃ箱。服や古いリネン類、何に使うのか分からない器具類や小さな棚、椅子などなどが、秩序なく積み上げられている。

 キッチンも、また別の意味ですごかった。キッチン用品が充実しすぎているのだ。

 1人用の小さな片手鍋だけでも4つある。シチューを作りおきするようなサイズの鍋も4つ。ナイフ、フォークに至っては、それぞれ30本は下らない。

 さらに圧巻なのは、様々な刃の形のナイフ類が、大小あわせて20本もあること。肉を切るのか、チーズを切るのか、用途はそれぞれなのだろう。でも1人暮らしの女性が、なにゆえ、こんなに刃物を溜め込んでいる?

 調理器具もまた多い。 大型のジューサー、大型ミキサー、大型フードプロセッサーにハンディタイプのミキサー。 アメリカ製品は1つ1つが大きく、重そうだ。

 レストランじゃないんだから。
 
 そう、レストランじゃない。だって食べる場所がないのだから。

 食卓の上には、また、段ボール箱やら謎の布類やらが山積みになっていた。食卓もまた物置と化していて、本来の機能は果たせない状態におかれていた。

 結局、リビングのソファーを牛耳る大型犬のそばに、ちょこっと腰かけさせてもらって、シリアルを食べた。リビングの上空では、インコがさえずり、飛び回っていた。
 
 なんて家なのか。私の東京の古家以上のひどさである。類は友を呼ぶとはいうけれど、国境を越えてまで、そんな友を呼んでもらわなくても。

 のちに述べるが、この私こそ、なかなか並ぶモノのいないほどの片付け苦手女なのだ。でもこの家の混雑ぶりは、そんな私を圧倒させる迫力に満ちている。

 私が片付けのできない理由は、それなりにあった。きっとこのルーミーにも、それなりの理由があるのだろう。

 心に決めた。せめて自分の部屋だけは、ここまでにはしないようにしよう。

 私の荷物は、段ボール箱で15箱ほど。部屋に山積みになっていた。渡米2日目は、偉大なる反面教師の存在におびえながら、ひたすら、段ボール箱の開封にあけくれた。



フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209499

下巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209500

問題少女 第1巻〜最終巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/215228


株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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