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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.13・・・オバマ演説会場で得た、人間関係構築の糸口(ライクス)- 2017.12.28(木) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.13・・・オバマ演説会場で得た、人間関係構築の糸口

ライクス

2017.12.28(木) 10:00

オバマ大統領の演説会場。とてつもない長蛇の列ができていた

 気の遠くなるほどの列に並んで、オバマ大統領の演説会場にたどりついた話を、前回に書いた。実はそこで私が得たものは、生オバマをみた、という体験にとどまらなかった。

 もしかして、このアメリカで、言葉を失った(に等しい)私が社会に入り込んでいくノウハウはここにある? こう思えた出来事に、この日は遭遇した。

 列の末尾にたどり着き、しばらくすると、周囲の人達がたがいにおしゃべりをし始めた。

 ちなみにシアトルに来て私が最も驚いたことの筆頭が、知らない人同士が実によくしゃべるということ。バスに乗り合わせても、突然、「ほらみて、きれいな夕日」と隣のご婦人に話しかけられたり、「ねえ、あなたの名前はユミ?」と別人と勘違いされて声をかけられたりする。自然に世間話が始まって、大笑いしている人達がバスの中、スーパーのレジなどそこかしこで見かけられる。

 その現象が、オバマ会場でも自然に生じた。私の横では、黒人で40代後半くらいの大柄な男性と、10代後半の白人の男の子が会話をしはじめた。黒人男性が、ユーモラスな人でなにか面白いことをしゃべり、白人男子が笑いながらコメントする、という構図ができあがっていた。あまりに列が長いので、私もなんとなくその輪に入りたいなあと思い、ちょっとそちらを向いて、さりげなく耳を傾けた。

 その姿勢に反応し、黒人男性もなんとなく、私も含めて話しかけるような構図になった。私としてはさあここで、何か言葉を発して会話に加わりたい。

 がんばって、なにか言った。もう思い出せないような些細なことだ。「それって、前のオバマ演説会にもあなたは来たってことですか?」みたいな。

 黒人男性は「そうさ、だからさ」と大歓迎、さらに陽気に話しはじめた。ところがである。白人男子の方は、まるで違った。

 ハァ? 私のたどたどしい語りかけを、彼ははっきり鼻であしらった。

 その後もその子に向けて「何歳なの?」「大学生?」と質問すると、そのたびに「ハ?聞き取れないんですけど」と言って、不快な顔をする。

 アメリカに来て何が疲れるかというと、これだ。人に見下げられる。自分の発した一言に対して、相手の目つきが怪訝そうに変わる。これが一番堪えるのだ。

 けれども、その流れが変わる瞬間がやってきたのだった。

 黒人男性は元空軍パイロットで、沖縄の基地で4年間も軍務に着いていたという。「沖縄にいたの?」「ああ、僕は沖縄大好きさ」。私たちがこう盛り上がり始めると、白人男子は2人の話に耳を傾けざるを得なくなってくる。黒人男性は日本の話をしたかったとみえて、大喜び。白人男子は2人の会話に加わるためには、私の話にもまともに対応せざるを得ない流れになってきた。

 「僕は日本は知らないけど、中国に住んでいたことがある」。ぽつぽつと、私に向かって白人男子は口を開き始めた。「中国のどこ?」「広西クワン族自治区」「え?」「広西クワン族自治区!」 イライラ感を隠そうとはしなかったが、それでも、会話にはなってきた。

 1時間が経ち、オバマ会場に到着した。そのころには3人の会話は適度にかみあうようになっていた。演説を終えて、会場を出たころには、長い道のりを経て一つの目標に到達したチームのような感さえ生じていた。

 駐車場で黒人男性と別れた。白人男子とは、会場を後にしてからも共に大学のキャンパスまで歩いた。結局、一緒に学食でランチまで食べてから、別れた。アメリカに来ておそらく初めて得た、コミュニケーション上での達成感があった。

 帰る途中で考えた。この日の発見は2つ。まず、日本に関心のある人は、私の英語に真剣に耳を傾けてくれる。そしてもう1つは、相手が私の話を聞かざるを得ない状況を作り出していく。この英語社会で人とのつながりを得るカギは、これではないか。

 後者はなかなか実践が難しい。でも前者なら、やりようはある。たとえば日本研究の講座に顔を出してみる、ということならできそうだ。

 そしてなにより、こう思えた。勇気を出してぶつかってみれば、思いがけない展開がある。この小さな達成感が、うれしかった。 



フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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