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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.34・・・世間話は中年力の賜物。若者相手だって怖くない(ライクス)- 2018.01.18(木) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.34・・・世間話は中年力の賜物。若者相手だって怖くない

ライクス

2018.01.18(木) 10:00

 ホームレスの若者と会話するヒントを得たきっかけは、こうだった。私は日本の雑誌の仕事で、福島の原発問題について、一般のアメリカ人の反応をさぐるという取材をしていた。そこでせっかく見知らぬ人と話す機会があるのだからと、その日会ったホームレスの若者に、「日本の原発問題について、どう思う?」と聞いてみた。
「地震、津波は天災だけど、原発は人災の側面が大きい。日本の人々にはお見舞い申し上げます。でも日本政府と、あの、電力会社は情報公開の方法に問題がある。日本の人々は、十分な情報を提供されていないから、不安が高まっているんだと思う。放射能の恐怖は、短期的にはわからないからいま人々がパニックになる訳じゃないかもしれなけど、長期的には発ガンの可能性が高まるでしょう。アメリカは1979年にスリーマイル島の原発事故を経験しているから、その時の体験を、日本に伝えることはできないのかと思う」
 白人の、とてもおしゃれで一見ホームレスにはまるで見えない若者から、硬質な意見が返ってきた。そして言った。「僕からも質問があるんだけど?」
「日本は第二次世界大戦で原爆を落とされたでしょう。その経験が、今回の原発事故の克服に役立つということはあるかな?」
 いやあ、これは予想外の観点で、答えに詰まった。原爆の体験は、死者数といい、世界唯一の被爆国に自分たちがなったという事実からして、国民全体が共有する歴史に昇華している。原発事故はそれとは質が違うと思うけれど、事故がこれからどこに落ち着くかはまだ解らない、と苦し紛れに答えておいた。小学生のような英語で。
 彼は興味津々に耳を傾けてくれた。そして彼との話を聞いた別の若者も、話に食い込んできた。
「電力会社が、事故の大きさを想定外として、補償金の積立を十分にしてこなかったのが問題だと思うよ」
 この彼は、東電と政府の補償への対応について、意見をとうとうと述べた。
 なるほど。アメリカ人は往々にして政治の話が好きだ。パーティーでも、何かと政治ネタが飛び交っていて、アメリカの政治について何らかの意見を求められることが多い。世間話のネタのほとんどを、政治や時事問題が占めている。
 ホームレスの若者もアメリカ人。さらに彼らの中には、社会構造への疑問を強く抱いている人が多く、格差問題には一家言もっている。なるほど、世代も環境も国籍も違う彼らとも、社会、政治ネタなら共通の話題が持てる。こう気づいたのはこの時からだった。
 私はアメリカ政治や社会に詳しくはないが、世間話程度であれば、日本で培った中年としての常識で、なんとか食らいつくことはできる。語学の吸収力では若者に負けるが、中年留学ならではの底力があるとすれば、こうした世間話構築力などの、社会人能力にあるのではないか。
 こう考えると、ホームレスの若者との対話も、楽しみになったのだった。 




フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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