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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.56・・・TOEICやTOEFLテストで計れない英語力とは?(ライクス)- 2018.02.09(金) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.56・・・TOEICやTOEFLテストで計れない英語力とは?

ライクス

2018.02.09(金) 10:00

マネキンのポーズも、アメリカでは心なしか挑発的

 アメリカ留学も1年が過ぎた。さてこの1年余の英語力の成長が、いかほどのものだったかと自問する。来たばかりの頃の、世界に突然放り出された赤ちゃんに戻されたような、寄る辺なさはさすがに消えた。でもふり返ってみれば、私がアメリカにわざわざやってきて、得た英語力とは、単語力や文法力、リスニング力といったTOEICやTOEFLテストで計れる類のものとは、ちょっと違うように思う。

では、その「数値化できない英語力」とは何なんだろう。と、思わせぶりに書きながら、その正体を表現するのはなかなか難しい。

異国に暮らすのに欠かせない生活必需フレーズを覚えた、というのともまた違う。たとえば来た当初は、バスに乗った時、運転手に「Pay when you leave!(降りるときに料金を払え)」と、よく怒鳴られた。なんでも、バスは時間帯または路線によって、乗る時に払うものもあれば降りる時に払うものもある。日本のように統一されていないのだ。みんな乗車時に払うものだと思い、運転手の前でもたもたしていると、早くしろとばかりに運転手が大声を出す。身をすくめた。あれはこわかった。40を越えると、人に声を出して怒られる機会はがくっと減っているので、なおさらだ。

もっともこれなどは、ルールを覚えてしまえばそれでよし、の類。初めての路線に乗る時、運転手に目的地に行くかどうか確認するフレーズ「You gonna stop at 45th and University? (このバス、45thとUniversityに行く?)」なんかと同等だ。

ところが、こちらはどうだろう。バス停にバスが止まると、こんどは乗客が大声を出す。「Back door!」。はて。どうやら「前だけでなく、後ろのドアも開けろ」と運転手に要求しているのだ。

これまた日本なら、前のドアが空いていれば、乗客は文句も言わずに前へ歩いていって、ただ、そのドアから降りるだろうと思う。けれどもアメリカ人たちは、後ろにもドアがあるんだからここを開けろ、と要求する。うら若き女性もイケメン青年も、腹の底から太い声を出して、「バーッドアー」と叫ぶ。時間がかかるし、急いでいる他の乗客に迷惑がかかるかな、とは思わない。運転手は、あ、そう、という感じで悪びれることもなく、ドアを開けるボタンを押す。

私の感覚では、この「Back door!」が言えるかどうかは、数値化できない英語力に分類される。なぜなら、まず「Back door!」を言うには、大声を出す必要がある。おとなしく暮らしている私のような外国人にとっては、大声を出すという状況がそもそもない。「Back door!」が開いていなくても、ちょっと歩いて、黙って降りる。

 大声を出そうにも、タイミングが難しいとの壁も立ちはだかる。誰かが言ってくれるかもしれないと思って待っていると、バスは発進してしまう。でも運転手も何かと忙しいので、中途半端な「Back door!」の声は、スルーされることも度々だ。二度、三度ど叫ばざるを得なくなるリスクをも孕む、この「Back door!」。

だから、ここぞというタイミングを見計らって、瞬時に叫ばなければならない。混雑時には何十人もが連なる、立派な体躯のアメリカ人たちの肉壁を突き抜ける野太い声を、スキを捉えて、さっと自分のものにしなければならない。

この間合いのはかり方が、「Back door!」成功のカギであり、私に言わせれば、「数値で計れない英語力」の一つの要素なのだ。

えー、そんな単純な話なの? と思う方もいるだろう。けれどもこの問題は、私のみならず、多くの英語学習者が英語社会に出たときに直面する当惑そのもの。この「英語力」が身に付かなければ、英会話学校でならいくらでも流暢に話せるが、生の人間を相手にすると思ったことが何も言えないという羽目になってしまう。

けれどもこの「間合い力」、考えてみれば、英語だけに関係する力量ではない。日本語での日常会話でも、実は同じことだとある時気がついた。時宜を捉えてすっと人の話の腰を折り、上手に自分を会話の中心にもっていく人がいる。何人かのおしゃべり、または会社の会議でもそう。うまく発言する人。いるでしょう。あれだ。話の流れをつかむ能力がある人が、いる。

だからもし、日本にいる時に私がこの「間合い力」の存在に気がついていたら、無理をしてでも、集団の中で、やや出しゃばってみる訓練を、こっそり自分に貸していたと思う。剣道や空手で、相手に向き合いながら繰り返す、軽い攻撃の稽古のイメージだ。いくら地力があっても、間合いが取れない人はポイントが取れない。人間関係にヒビが入らないよう、注意がいる「稽古」だが。

「数値で計れない英語力」は、「間合い」のほか、いくつか項目があるように思う。次回以降、もう少し詳しく記してみようと思う。




フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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