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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.64・・・英語教育改革は大学から(ライクス)- 2018.02.17(土) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.64・・・英語教育改革は大学から

ライクス

2018.02.17(土) 10:00

「藤寿司」

 40代も半ばになって、私は、たいへん効率の悪い英語学習人生を送ってきたと、気がついた。いったいどうすれば、効率よく英語を身につけることができたんだろう。

 話は飛ぶが、音大でピアノを教えている女性と話していて、驚いたことがある。

 「ほとんどの音大生のピアノの実力のピークは、受験直後。みんな受験で力つきてしまうから、入学後、生活時間にゆとりができて、本来ならそれからが研鑽の時期になるはずなのに、在学中にさらに伸びる人はむしろ珍しいくらい。私の生徒を見ていても、高3のあのころが一番弾けてたわね、と感じる子ばかりです」

 いや、もちろん多くの例外はあるのだと思う。音大をでて、ピアノコンクールで優勝、といった実力者はたくさんいるわけだし。けれどもこの話には、驚くと同時に、納得もいった。

 何事も、一つのことを身につけるには、身を削るほどの努力がいる。時間がかかる。受験ほど、その努力を人に強いることができる機会は、人生において、たしかにそうはないだろう。

 一つのミスが、合格、不合格という形で人生を大きく分ける。それが受験だ。18歳でその試練にたたされる高校生は、音楽なら音楽の鍛錬に身を削る。一般の大学を目指す者もまたしかり。

 思えば、私の英語力のピークも、大学受験の直後だった。ええ、一年もアメリカにいて、それはないでしょうと言われても、残念ながら認めるしかない。

 話す、聞く、は英語の国に暮らしたのだから、それなりに上達している。でも文法力という点では、まったく18歳の春の、あの時の力に到達していない。日本の新聞に載っていた、センター試験の問題をちょっと解いてみて、痛感した。難しかった・・・。

 そしていま痛感するのは、ある線を越えようと思うと、文法力というか、高校生のころに叩き込んだような基礎的なことがしっかり体にしみこんでいないと、だめなんだなあ、ということ。

 友達と話したり、町中で買い物するには、文法はいらない。でもちょっと知的な人たちの話を聞き、きちんと理解しようとすると、高校文法ででてきた重要構文が頻出していることに気づく。"Hardly,---,when"とか、"no more,---,than,--"って、何だっけ、と思い出している間に、話は流れていってしまう。ああ、重要構文っていうのは、頻出する構文のことだったんだと、今更ながらに実感する。

 あれだけ体に叩き込んだ英語の基礎力を、では、なぜ活かすことができなかったのか。音大生と同じく、私も、燃えつき症候群といおうか、受験で疲れはててしまったのだった。

 わが東京外国語大学では、今のことは知らないけれど、私のいた80年代後半は、英語教育は一般大学と変わらない程度のことしかやっていなかった。専攻の語学(私の場合は中国語)以外は、第二外国語として英語をとっただけ。

 思い返せば、映画をみながら、その台詞をディクテーションする、といったおもしろい授業もあった。先生も、学生の興味をそそろうと、工夫してくださっていたのだろう。でもこちらはすでに、英語に関しては燃え尽きちゃっている身。うーん、聞き取りは難しいな、この授業は単位取れればいいや、くらいの姿勢だった。

 いまの日本経済の厳しい状況しか知らない大学生の、英語科目への姿勢は、違うのかもしれない。むしろそうあってほしい。あの基礎力のしっかり身に付いていた時代に、さあこれからは話す、書く、聞くにチャレンジしようとしていたら、いま、私はこんなに苦労しなかっただろう。自信をもってそういえる。

 いえいえ、あなたは外語大生。一般の大学とは高校時代に身につけた英語力のレベルがちがうでしょ--。といううれしくもない大きな誤解をよくされる。でもそれも、自信をもって、誤解です、と断言できる。

 高校生向けの文法の問題集をたまにやってみることがある。初級、とか中級、というレベルのものだ。いやあ、とても難しい。センター試験どころの話ではない、基礎的な問題でさえも、覚え直さなければならないことだらけ。日本の高校生は、大変高い英語基礎力を身につけることを要求されていることが、よくわかった。テストで50点のレベルでも、あの難しい、細かな文法問題の「半分は分かっている」のだからすごいと思う。

 この実力が萎えてしまわないうちに、鉄が少しでも熱いうちに、どうか、英語の応用に目を向けてほしい。大学生の、人生の中では比較的、時間にゆとりのある時期に。のちのちの人生への投資をしておいても、きっと悪くない。

 小学生への英語教育よりも、大学生の英語教育強化の方が、よほど現実的に、日本人の、使える英語力を高めるはずだ。と、実践できなかった者の悔いと羞恥をこめて、声をちょっぴり大きめにして、いいたい。


※写真キャプション
シアトルのインターナショナルディストリクトにある「藤寿司」は、コストパフォーマンスよしの本格寿司。もっと高い店はいくつもあるけれど、ここが一番好き、というのがこちらに長い日本人の友達の弁




フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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