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> ニュース一覧 > ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.1・・・同性結婚に”準結婚”--猛反対してきたカトリック教会に「反対やーめた」の動き(ライクス)- 2012.04.16(月) 15:04

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ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.1・・・同性結婚に”準結婚”--猛反対してきたカトリック教会に「反対やーめた」の動き

ライクス

2012.04.16(月) 15:04

シアトルといえばスターバックス

 今年は、4年に一度の大統領選の年。このお祭り騒ぎの最中に、アメリカにてフリージャーナリストとして滞在する機会を得ました。

 というとなんだか立派に聞こえますが、私は「アメリカ」について、何を知っている訳でもなし。いってみれば、アメリカ入門1年生。そういうシロウトの唯一の取り柄といえば、何も知らないがゆえに、ものごとが新鮮にみえること。

 そこで今回からはこの場を借りて、私たち日本人にとっての「隣の大国」について、ほぉー、と思った事、素朴なゼロからのアメリカ学を書いていきたいと思います。

 さて今朝は、私の住むシアトルの、地元紙シアトルタイムズを開いて、一つ読みいった記事がありました。

 それは、「一部の牧師たちが、同性結婚反対の動きにノーといっている」というもの。

 同性結婚はいま、アメリカで大きなトレンドになっています。わがシアトルのあるワシントン州でも、先日、同性結婚を認める法案が成立しました。

 現在、アメリカで同性結婚を認めているのは50州のうち、5州(マサチューセッツ、コネチカットバーモント、ニューハンプシャー、アイオワ)とプラス首都ワシントンDCだけ。

 ワシントン州もその栄えあるゲイ・マリッジ先進地域に仲間入り--の予定なのですが、どっこい反対派もいるわけです。

 その最たる存在が、カトリック教会。カトリック教会は、同性結婚を認めると、伝統的な結婚の定義が根本から変わってしまう、等々の理由で、ずっと同性結婚に反対の姿勢を貫いてきました。いわゆる保守主義的な価値観を共有する人が、カトリック信者には多いのです。

 ワシントン州では、同性結婚を認める法案を阻止しようと、11月に住民投票にもちこむべく、署名運動がはじまっています。その最右翼であるはずのカトリック教会に、どうやら「もう反対はやめておこうよ」という動きが出ている、という。シアトルでは、少なくとも3つの有名教会が、「ウチは反対、やーめた」と意思表示をしたとのこと。

 ほう。どうしてでしょう。

 その前に、素朴な疑問が一つ、ありました。法案に反対するための署名活動って、一般的にいえば、政治活動ですよね。アメリカのカトリック教会は、保守派つまり共和党的価値観を体現しています。宗教組織でありながら、きわめて政治色の強い組織だと、だれもが認識しているわけです。

 けれども記事は、その点について、実はカトリック教会の署名活動は「政治活動にあたらない」として、こう説明しています。

「教会が政治活動に関与すると、税金免除の特権を失うリスクがある。けれども、この税金免除特権についての規制は、イニシアチンブ(一般住民が立法に関わる提案を行うこと)と住民投票のキャンペーンには適用されない。なぜならそれらは立法に関わる行為だから(注・政治活動ではない、ということ)。法律を保留にしておくためのロビー活動は、教会にも認められている」

 なんと、法の網、ループホールがあったのです。住民投票のためなら、よし。法律を棚上げにするためのロビー活動は、よし。よって同性結婚反対の署名活動は、政治活動じゃありません、という理屈が成立することに。

 なるほど。

 ところで「ドメスティック・パートナーシップ」、そして「シビル・ユニオン」という言葉があります。同性結婚を認めているのは、まだ5州のみですが、いくつかの州は、同性愛者カップルに認めた「法的な関係」、いわば準婚姻関係を用意しています。それがこの2つ。

 シビル・ユニオンって、市民のユニオン? 労働組合かなにかと、思いますよね。ところが、シビル・ユニオンとは、ドメスティック・パートナーシップよりもう一足、「結婚」の近くまで踏み込んだ関係のこと。結婚→シビル・ユニオン→ドメスティック・パートナーシップの順で、法的な優遇策が弱くなっていくそうです。

 ドメスティック・パートナーシップは、1999年にカリフォルニア州が全米で初めてスタートさせた制度。その後、ワシントン州をはじめ、いくつかの州が類似の制度で、同性カップルの関係性を公的にするしくみを作りました。州によって内容は異なりますが、健康保険にパートナーを加入させることができる、財産相続の権利を認める、葬式を行う権利を親族に次いでもつ、等々です。

 シビル・ユニオンの方は、一時は4州が制度を作っていましたが、今ではニューハンプシャー州のみに。残りの3州は、同性結婚を認める法律を作ったため、シビル・ユニオンは必要なくなったのです。

 同性カップルにとっては、どちらも「ないよりマシ」ではあるけれど、結婚よりずっと手続きが煩雑です。たとえば、もし州外にでかけた時にカップルのどちらかが事故で重体、といった不慮の事態にみまわれた時。その州が、準婚姻関係を認めていない州であれば、パートナーは相手の医療についての決断権をもたせてもらえないわけです。

 アメリカ社会の、同性結婚への意識は急激に変わりました。アメリカでは、わずか16年前に、「結婚擁護法」(Defense of Marriage Act)という、結婚は男性と女性がするものだと定義する法律(連邦法=国としての法律)まで定めていました。ところが、99年にカリフォルニア州が「準結婚制度」の創設に踏み切りました。そしてマサチューセッツ州が、全米ではじめて同性結婚を法的に認める制度を創設。

 同性結婚までは踏み切れないものの、準結婚制度くらいは同性カップルのために用意しておこうか、と考える州が相次ぎました。

 たった10数年の間で、異性愛者の間でも、同性婚への意識は大きく変わりました。私の住むシアトルでも、ゲイだ、レズビアンだと公言する人に、驚くほどしょっちゅう出会います。おおっぴらに口にできるということは、「言ってもOK」と互いに了解する土壌が、社会の中に培われているから。

 別に他人に迷惑をかけるわけでなし、愛し合う人同士が結婚するという行為を、同性だからといって禁止する理由があるのか、と考える人が増えました。

 わがワシントン州でも、まもなく退任する女性知事が、私の最後の花道に、とばかりにがんばって同性結婚法制化への意気込みを示していました。議会で大激論のすえ、ギリギリの票差でしたが、可決されました。

 記事によると、そういった流れの中、カトリック教会の一部には、「反対するという行為自体が引き起こす影響を考えたほうがいい」と言い始める人が現れたとか。たとえば、メイン州でカトリック教会が2009年に同性結婚の法案反対の運動を起こした時、一部の教会は信者の数を減らしました。

 むしろ、ニューハンプシャー州では、同性結婚を完全に認めるよりシビル・ユニオンを支持してそれ止まりにしておこう、とカトリック教会が方針転換したとか。

 カトリック教会の「政治活動」、同性結婚に準結婚制度。日本にはまだ存在しない事柄が、いろいろあるものです。

 ちなみにワシントン州には、1カ所だけ、州に先んじて同性結婚が認められている地域があるんです。それは、あるインディアン居住地(スノホミッシュ・インディアン居住地)。インディアン居住地は、州の法律とは別に、居住地内の法律を作って、自治をしているのです。

 このあたりも、また日本人にはビックリの、アメリカ社会の一側面です。

シアトルタイムズ
Several priests shut church door to petitions to block gay marriage
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2017978133_catholics14m.html


シビル・ユニオンとドメスティック・パートナーの違い
http://equalitymaine.org/marriage-civil-unions-and-domestic-partnerships-comparison

http://lesbianlife.about.com/od/gaymarriageinformation/f/CivilUnionDP.htm


※写真キャプション
シアトルといえばスターバックス。1号店は観光名所になっている


フリーライター
長田 美穂
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。2010年8月に『ガサコ伝説『百恵の時代』の仕掛人」(新潮社)を刊行、10月よりシアトル在住。


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