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> ニュース一覧 > ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.5・・・副大統領の役割って? バイデン副大統領にみる「人の心を動かす力」(ライクス)- 2012.06.04(月) 10:19

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ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.5・・・副大統領の役割って? バイデン副大統領にみる「人の心を動かす力」

ライクス

2012.06.04(月) 10:19

リベラルなアメリカ人の間で評価が急浮上のジョー・バイデン氏

 共和党大統領候補のミット・ロムニー氏が、40歳という若さのヒスパニック系議員マルコ・ルビオ氏を、副大統領候補に選ぶのではないかと話題になっています。ヒスパニック系の票は大統領選の行方のカギを握るとされているため、ルビオ氏が副大統領候補になればオバマ陣営には打撃だ、とメディアでは騒がれています。

 じゃあオバマ氏も、選挙のために、いい(=大衆受けする)副大統領を選べばいいのでは?
 
 こう思いますよね。恥ずかしながら、私はこちらに来て新聞を読むようになるまで、「オバマ」はともかく、その副大統領については、名前さえ、うろ覚えでした。

 ジョー・バイデン氏。最近、自身はカトリックでありながら、同性愛結婚を支持するという発言をしたりして、実はこんなにいいやつ(グッド・ガイ)だったのかと、リベラルなアメリカ人の間では評価が急浮上しています。

 先日、私はバイデン氏の演説を聞いて、涙が止まらなくなりました。それは、メモリアルデー(戦没者追悼記念日)の前、戦没者の家族の集会での短いスピーチ。

 「プレスがいるこの場で、この話をするのはよくないのかもしれないけれど」と前置きして、40年前に、交通事故で妻と娘を失くした時の話を、ゆっくりと語り始めたのです。

 クリスマスの買い物に出かけていた妻と娘、息子たち。そこにトレイラーが側面衝突。バイデン氏は、両手を前に組んで演説台の上におき、言葉を詰まらせながら、言いました。

「電話をとったら、私の家族が交通事故にあった、と言う。みなさんもそうだったでしょうが、分かったんだ。その声のトーンで。体の芯で、なにか悪いことが起きたんだと」

「電話は、私の妻は死んだ、娘も死んだと。息子たちについては、分からなかった」

 絶望感と憤りに襲われ、「生まれて初めて、人がなぜ、故意に自殺をするのかが分かった」とバイデン氏は言います。

 バイデン氏の救いのきっかけになったのは、突然、かかってきた一本の電話でした。

 それは30歳だったバイデン氏よりはずいぶん年配の、元ニュージャージー州知事と名乗る人物。彼は自分が州の検察長官だった時、妻を失った体験を、バイデン氏に語り始めました。

「カレンダーに書き込んだらいい。事故のあった日が”1日目”。毎日、天気と自分の具合を記していく。しばらくしたら、それをグラフにするんだ。途中、落ち込んでも、一日目ほど悪くはないだろう」

 バイデン氏は悲しい体験から回復した先駆者として、会場にいた、家族を失った人々に自分の体験を伝えたかったのです。

 政治家が「人間味」を出すと、とりわけ保守派からは批判の対象とされると、ワシントンポストのコラムニスト、マイケル・ガーソン氏は指摘しています。

 共感が安易に乱発されると、政治は日和見で、人気取りに流れます。性犯罪について取材をしている私の目にも、悲惨な事件が起きると、すぐにそれに対応すべく厳罰を用意するアメリカの政策の流れには、疑問符がつくことが多いです。

 しかしガーソン氏はコラムで、リンカーン大統領が他者への共感から奴隷解放の難事業に成功した例をあげ、バイデン氏の共感力に賛辞を送りました。

「他者へ共感は徳であり、正義であり、人と人との垣根を超える力がある--バイデン氏が30歳で自殺を考えたという事実は、年間800万人に上る、自殺を真剣に考える人々、そして100万人に上る実際に自殺を企図した人々にとって、より大きな意味をもつ」

 親しい人を失った痛み、その辛さにいっそ自分も死にたいと思った経験。私がバイデン演説に涙したのは、彼の体験を聴き、自分が大事な人を亡くした時の記憶で一杯になってしまったからでした。

 一本の電話。怒り。自責の念。私も同じだったよ、バイデンさん、と思ったのです。

 「前は嫌いだったけど、この人をもう嫌いにはなれない」「なんてパワフルな演説なんだ」等、ネットでこの演説を検索してみると、賛辞が溢れていました。

 自分の胸の内を、戦死した兵士の家族の前でそっと明かしたバイデン氏。オバマ大統領はこのバイデン副大統領の人間味あふれるキャラクターを、うまく選挙戦に活用できないものかと思ったりします。いや、こういった「共感力」なんかは、「ヒスパニック」とか「移民政策強硬派」(ルビオ氏)みたいな、わかりやすく強いメッセージにはならないので、人気とりには使えないのでしょうね。

バイデン氏の演説
http://ad-orientem.blogspot.com/2012/05/vice-president-bidens-emotional.html

マイケル・ガーソン氏のワシントンポスト・コラム
http://www.washingtonpost.com/opinions/bidens-personal-grief-lessens-isolation-stigma/2012/05/31/gJQAt0RQ5U_story.html



フリーライター
長田 美穂
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。2010年8月に『ガサコ伝説『百恵の時代』の仕掛人」(新潮社)を刊行、10月よりシアトル在住。


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