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ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.14・・・日本では報じられない「2州でマリファナ合法化」--ワシントン州とコロラド州の壮大な実験

ライクス

2012.11.29(木) 09:10

 オバマ再選に全米が湧いた11月6日深夜。実はシアトルでは、もっと驚きのニュースが2つ、あった。

 マリファナ解禁、そして同性愛結婚の合法化だ。

 住民投票(イニシアティブと呼ばれる)の結果、ワシントン州の住民は、この2つに対して「ゴーサイン」を出したのだ。

 これにはびっくりした。同性愛婚はすでに先行する州があるのだが、マリファナ完全解禁は、ワシントン州が全米ではじめて。コロラド州と同時に、アメリカの中で「そこだけ」が、まるでオランダのような、別の世界になることになる。

 今回は、マリファナ合法化について書きたい。

 私が驚いたのは、2つの点からだ。1つは、住民投票によって、このような大きな法案が可決されてしまうこと。

 マリファナは、もともと法案も、住民が出したものだった。アメリカ人の友人に投票用紙を見せてもらうと、「オバマかロムニーか」の項目より前に、「マリファナ法案に賛成か否か」を選ぶ欄があった。

 日本の住民投票の多くは、住民の「意思表示」のようなもので、政策には反映されない。けれどもこちらの住民投票は、住民が法律を作り、知事が反対しようとも(実際、知事はマリファナには反対だった)住民がOKといえば、それが通ってしまうのだ。

 マリファナを、21歳以上であれば所持しても使用しても構わない、という法案は、賛成55%、反対45%で可決された。投票日からジャスト一ヶ月後の12月6日より、施行されることになる。

 「ザッツ・ザ・デモクラシー!」。アメリカ人の友人は、選挙結果に雄叫びをあげていた。

 もう一つ、私が驚いたのは、マリファナ解禁を支持する人がこれほど多かったということについて。

 ワシントン州では、マリファナは医療用には1998年からすでに解禁されていた。カリフォルニアに次いて、2番目に合法化した州だった。今では医療用マリファナは、全米18州とワシントンDCに広がっている。

 医療用といっても、病院や薬局で出してもらうわけではない。売っているのは、ディスペンサーと呼ばれる「店」。医師に処方箋を書いてもらい、それをもっていけば、好みのマリファナを購入することができる。
 
 乾燥させたつぼみ、液状にしたもの、エキスを入れたクッキーやブラウニー等々。

 シアトルの知人のアメリカ人は、「シアトル市内のスターバックスの店舗数よりも、ディスペンサーの数の方が多い」と言っていた。そんなに多いとは、にわかに信じられないが、要は「そのくらい多い」ということらしい。

 というのも、マリファナは一種の代替療法として普及しているからだ。

 その効果についての実証も、ある程度進んでいる。

 マリファナには、ガンやエイズ患者への鎮痛効果や吐き気抑制、食欲増進の効果があるとの論文が、国家薬物取締政策局の委託によってアメリカ医学研究所(IOM)から97年に発表された。

 動物実験レベルでは、ガン腫瘍の縮小効果があるとの研究もなされている。

 マリファナの成分を合成した薬も2種類、アメリカでは販売されている。

 こうした下地もあってのことかもしれない。また今回の住民投票のためのマリファナ合法化キャンペーンで、マリファナについての背景が大いに語られた。

 マリファナは1937年までは、薬草として栽培され、流通していた。暖かい土地でよく育つので、アメリカにやってくるメキシコ人の資金源になり、急増するヒスパニック移民対策として、連邦政府は規制を始めた--

 とにかくワシントン州民は、マリファナに寛容になっていた。

 そこで登場した今回の法案、ねらいがまたうまかった。

 マリファナは元々、危険薬物なんかじゃなかった。実際のところ、市民生活にはかなり、広がっている。だったらいっそ合法化して、州が販売業者を管理することで闇の流通ルートを取り締まろう。闇市場を白日の下にさらし、利益を我らの手に奪い返そうじゃないかと訴えたのだ。

 マリファナは、もちろん医療用だけではなく、高校生や大学生がパーティーで吸う、といった娯楽目的の利用が大いに普及している。お金持ちの子のいく高校ほど、校内にはぷうんとマリファナの臭いがする、と聞く。ある程度小遣いのある子でないと、マリファナは高くて買えない。

 そしてもちろん、大人もマリファナを楽しんでいる。聞くところによると、ふわっとリラックスした気分になるそうだ。そういったマリファナ愛好者たちは、医療用マリファナの店ではなく、街の売人から買う。街の売人は、マリファナの大産地であるメキシコのマフィアやギャングの傘下にある。結局、マリファナは高値で取引され、闇経済を潤している。

 だったらいっそ、すべて合法化して、マリファナ店に税金を払ってもらおうじゃないか。その方が、メキシコ・マフィアも困るだろう。犯罪対策になるし、州は財政が潤うし、一石二鳥じゃないの。それに合法化してマリファナ産業が栄えれば、マリファナの価格はメキシコ・マフィアの扱う今の闇市場価格より下がる可能性もある。

 というキャンペーンを、マリファナ合法化支持の人々は、ワシントン州で繰り広げた。要は、マリファナという物質をめぐる人々の態度を、サンデル教授風にいうと、正義やモラルの問題ではなく、経済の問題として語るという戦略をとったのだ。

 反対派の人々、医者や警察は「マリファナには依存性がある」「21歳以上と年齢制限をしたところで、結局はティーンが入手しやすくなる」と、モラルで対抗したのだが、いまひとつ運動に勢いがなかった。

 合法化側が市民からの資金集めに成功し、広告をガンガン打ったのに対し、反対側は運動に統一感がなく、資金も集まらず、傍観するだけ。「州財政が潤う」「犯罪対策にもなる」といった主張に、公務員でもある警察官には、あらがえない部分があったともいわれている。

 果たして結果は、合法化側の勝利。

 州は36万3000人の人がマリファナを使うだろうと予測している。試算では、医療用マリファナの価格1グラム12ドルを参照に、末端価格は税金4ドル込みで1グラム16ドル。製造者、加工者、販売者が25%ずつ税金を払い、年間5億6000万ドルの税収増を見込んでいる。

 けれども全面的に合法になったのは州内のみ、一歩、州の外に出れば違法だし、州内でさえ、連邦警察にとってはマリファナは依然、違法薬物の扱いだ。その辺のツメを行政的にどうするのかは、まだまだこれからだ。また今後、連邦政府が州を訴える可能性も否定はできない。

 あと数日で、マリファナは普通の嗜好品になる。「ザッツ・ザ・デモクラシー!」のその後がどうなるのか、楽しみでしかたない。



フリーライター
長田 美穂
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。2010年8月に『ガサコ伝説『百恵の時代』の仕掛人」(新潮社)を刊行、10月よりシアトル在住。


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