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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.28・・・1回のランチで「部屋に来て」はないんじゃない?(ライクス)- 2018.01.12(金) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.28・・・1回のランチで「部屋に来て」はないんじゃない?

ライクス

2018.01.12(金) 10:00

シアトルも春真っ盛り

 アメリカに来て、まもない私が言うのもなんだが、アメリカ人男性、あるいはここ在住の男性たちは、概して、手が早そうだ。いや、手が早いという表現には語弊がある。手を出された訳でもないし、知り合いが誰かに素早く手を出す現場を見た訳でもない。

 でも何となく感じるのは、男たちが、ハッキリしているのだ。あなたに興味あります、タイプです、という表現において。

 正直なところ、日本では、私を含む周囲の友人たちの経験では、独身男性には「どっちなんだよ?」と叫びたくなるような、煮え切らないタイプが多かった。

 こちらでは違う。「関心ある」「なし」は、瞬時に分かる。

 たとえば大学で何度も定期的に顔を合わせているのに、私には話しかけもせず、名前さえも覚えてくれない男性がいる。マイク、としておこう。

 先日歩いていると、向こうからマイクがやってきた。「ハイ、マ…」と私から声をかけようとしたに、彼は目もくれず、さっさと通り去っていった。

 このマイク、しかしながら、別の顔を、別の女性には見せるのだ。ある日、彼がデレデレになって、談笑しているのを見かけた。相手は、20代前半らしき、背の高いナイスバディーな学生だった。

 さて、マイクにはまったく関心を持たれない私だが、そんな私でさえも、驚くべき出来事に遭遇した。

 ある授業で一緒だった男性から、突如、メールや電話をもらうようになった。ケンとしておこう。いつも面白い発言をする彼は、クラスの人気者的存在だ。「食事に行きたい」というので、いいよ、というと「金曜の夜にしよう」という。いや、できればランチでどうかしら、といっても「金曜の夜しか空いてない」と彼。いや、私はランチにしたいんだけど、と何度か交渉のやりとりをしたのち、ケンが折れ、金曜日にランチに行くことになった。

 彼の車で、大学から10分ほど離れた場所にある、ベトナム料理屋へ行った。授業のことなどを話すうちに、彼は自分が50歳であり、「前の奥さんはビルマ人で、その人との間に2人の子どもがある」と身の上話を始めた。要は彼は、アジア女性が好きらしい。

 なるほど。納得だ。たしかにケンと同じ授業の参加者に、彼の年齢に見合うアジア人女性は、私しかいなかった。

 そして帰りの車で、彼はサラっと言った。「今学期が終わったら、僕の部屋に来ない?」 

 部屋? 聞き違い? いや、部屋に来いといってるよ。こういう時、英語力がないと弱い。不意打ちにあって、相手に反応する前に、自分の聞き取り能力を疑ってしまうのだから。

 言葉を失う私に、「一緒にビデオでも見ない?」 と追い打ちをかけるケン。

 アワワ、アワ……。私がやっと言えたのは、「アイ、ドーント、ドゥー、ザット!」 

 「なんで? 彼氏がいるのか?」  いや、そういう問題じゃないでしょう。なんで私が、1回ランチしただけのあなたの部屋に行かなきゃいけないの、と声を荒げたいところだったが、できなかった。アメリカ人女性なら、「ハア?」などといって不快感くらい示すのだろう。こういった私たちアジア人の「優しさ」が、彼を、アジア人女性好きにさせているのかもしれないな、とは思ったものの、アメリカ式カマのかけ方には、私は慣れてない。

 このランチ以降、彼からの連絡はぱったり途絶えた。まったく、分かりやすい男である。その後は、廊下でばったり会うと、ハーイ、というくらいの、普通のクラスメートに戻った。そして次に彼から電話があったのは、1ヶ月後だった。

 「ハーイ、ジェニファー!僕です」

 間違い電話、するな! 次はジェニファーか。懲りない男である。でも「興味があったら、とりあえず行く」「ダメだったらその時に考える」といった、このチャレンジ精神には感嘆した。これが日本の独身男性にももう少し普及していれば、私たち独身女性も「どっちなんだよ」とヤキモキする苦労から、開放されるのにな、と思ったのだった。いや、それにしても、クラスメートとはいえ、昼間とはいえ、簡単に男の車にのる私が「アホか」という話である。





フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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