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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.30・・・夜のバスで変態男に遭遇−−「フレンドリー」と「危機管理」の取り違え(ライクス)- 2018.01.14(日) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.30・・・夜のバスで変態男に遭遇−−「フレンドリー」と「危機管理」の取り違え

ライクス

2018.01.14(日) 10:00

昼のバスは安全だが

 日曜日の夜8時半ころ、シアトルのダウンタウンのバス停にて、バスを待っていた。手持ちぶさただった私は、歩道に設置されているフリーペーパーの箱から一紙を取り出して、歩道の明かりを頼りに読みふけっていた。

 シアトルには、とても読み応えのある独自取材記事やコラムを毎号載せている、週刊のフリーペーパーが2つある。「The Stranger」紙の名物コラム、ゲイのコラムニストによるセックス相談「Savage Love」が私の最もお気に入りなのだが、その日は、無料高速道路を撤廃して有料トンネルに作り替えることを記事にて大批判、反対運動を起こそう、と訴えかけるというマジメな記事を読んでいた。

 そこへ、男が話しかけてきた。「ワッツ・ゴーインオン、トウデイ?」
 
 シアトルではよくある事である。知らない人に声をかけられ、世間話をして、バスの待ち時間を潰すのは。でも夜も9時近くともなると、あまり、人はしゃべらなくなる。バス停で夜、しゃべっている人といえば、私の経験では100%が酔っぱらいである。酔っぱらいの周りには、ドーナツ化現象が生じる。だれもそばに寄ろうとしないからだ。

 しかし酔っぱらい風に大声を上げるでもなく、男が自然に、昼間のバス停のように会話をしかけてきたので、つい私は「ファイン。ハウ、アバウトユー」と応じてしまった。気持ち悪いな、と直観的に思いながらも。

 男は、さらに自然に「横に座っていい?」と私の座っていた二人掛けの椅子を指した。白人で、歯の抜けた男だった。周囲に2,3人の人がいたとはいえ、暗がりで男と2人掛けの椅子、は気味が悪い。でも空いている席を指されて「ノー」とは言いにくかった。横に座ったその男は、こちらを見ながら、「ユア、ビューティフル」と言った。

 さらに男は話し続けた。「僕は空軍にいたんだけど、辞めて、今日はシアトルに旅行に来ている。この先の、北の方にホテルを取っているんだ」

 何番のバスを待っているのか聞くと、私とは別のバスだった。「残念。同じバスだったら、もっと話ができたのに」と男は言った。席を立つべきか、我慢するべきか、どちらが安全か。どちらかのバスが車での間だ、と我慢することにした。するとその男は、言ったのだ。「僕のホテルに来て、一緒にビデオでも見ない?」

 クラスメートとの一件(29回参照)で、「部屋でビデオ」の誘いは毅然と断るべし、と学んでいた。しかし夜、見知らぬこの変人を相手にした今回と前回は、状況がまるで違う。声を荒立てるのは得策ではない、と判断した私は、「ノー」とだけ言って、新聞をふたたび読むふりをした。

 私のバスが先に来た。無言でバスに乗り込み、一息つこうとした時、私は息を呑んだ。男が、運転手に何か聞いてから、同じバスに乗り込んで来たのだ。

 運転手に「その人を乗せないで」と言うべきか。一瞬迷ったが、私のバスもその男のバスも方角は北。「同じ方向だから」と言われれば、それまでだ。再度関わりを持つのは、もっと危ないと思った。窓側に座っていた私は荷物を横の座席に載せて、相手が座れないようにした。乗客は数人で、席はいくらでもある。男は私の斜め前に座った。私は状況を窺いながらも、目を合わさないように携帯電話に没頭した。いざとなったら、ルームメイトに電話するために。

 生きた心地がしなかった。バス停直前で「ストップ」のヒモ(ボタンを押すのではなくヒモを引く)を引き、駆け足でバスを降りた。そして自宅まで、暗がりを走って帰った。

 後日、この話を、同じくアジアから来ている留学生女性にすると、彼女は言った。

 「最初にアメリカに来た時に、お世話してくれた教授は、私に言ったよ。『アメリカで、知らない男性に声をかけられても、絶対に応じちゃいけません。言葉ではなく手を振って、英語がわかりません、というふりをしなさい』って。アメリカ人の男に話しかけられて、応えたりしちゃだめだよ」

 シアトルはバスでも知らない人がしゃべってる、人々がフレンドリーでいいなあ、などと暢気にこの習慣を評価していた私が、甘かった。シアトルは全米でも屈指の治安を誇る街だと言われている。しかしここは異国。異文化を理解したような気になって、変態男との会話に応じたりしては、絶対にいけない。半年をすぎ、適度な慣れが生じてしまい、自分の危機察知センサーが鈍磨していたことに気づかなかった。そもそも、夜、バスに1人で乗るのはやめよう。激しく反省した。



フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/215228


株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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