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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.21・・・女の転機、ゴミ屋敷が生まれ変わる(ライクス)- 2018.01.05(金) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.21・・・女の転機、ゴミ屋敷が生まれ変わる

ライクス

2018.01.05(金) 10:00

洗面所だけは、最初からとてもきれいだった

 また家がきれいになっていた。
 
 ある日ドアを開けると、端と端をきっちりそろえて折りたたんだシーツのように、リビングが片付けられていた。私がこの家へ来て4ヶ月、家は週単位で、どんどん整理整頓されてきたのだったが、年をまたぐと、ついに完成形かと思えるほどの水準に到達していた。

 やるときはやる。ただし、やらない時はぐだぐだ。それが我がルーミーの特徴であるのは、この4ヶ月でよくよく分かった。たとえば彼女は食事の後、自分の食器をまず洗わない。シンクの横にボン。結局、ほとんどは私が洗うことになる。

 実は台所には大きな食器洗い機がついているのだが、「きれいに落ちないから」というルーミーの考えから、使用禁止。最初はとても納得がいかなかったのだが、今となっては、その理由も分かる。

 彼女は、いざ洗うとなれば、徹底的にやる。カップの底や大皿の裏面など、洗いにくくて汚れのたまりやすい部分も、彼女が洗えばピカピカになっている。あれをみれば、ここまでしないと気が済まない人なら、たしかに食洗機じゃものたりないわねと思う。

 その彼女の特質が、1年、2年単位の長期間で現れたのが、この、「元・汚い家」だった。私が越してきた10月時点では、「ゴミ屋敷」と呼ぶに差し支えないほどの、ちらかりっぷりだった。彼女にとっては客室(家賃収入源である)である私の部屋以外の場所は、なかなかの光景だった。

 けれどもその後、彼女は週末ごとに、大騒ぎをしながら、片付けを続けてきた。毎週、毎週。「アイラブ クリーニングー」と、陽気に歌いながら。そして気がつくと、ゴミたちのいくつかはリサイクルショップに出され、積み上がっていた古い服の山は、夜間高校の先生をしている彼女の友人を通じて、貧しい女子高生たちにプレゼントされた。山は崩れ、ゴミ屋敷に空間が生まれた。

 5年住んでいるというこの家が、どうしてここまで散らかってしまったのか、その理由については大まかにしか彼女は語らない。この家に越してきた時の彼女は、経済的には破産寸前の状態だった。はっきりとは語らないが、私生活でも、いくつか辛い思いをした。さらに2008年のリーマンショックを経て、経済的にさらなる打撃を被った。さらにいえば、彼女は、子どもの頃から両親との関係にも苦しんできた人だった。

 平たくいうと、彼女は人生に疲れ切って、逃げるようにこの家に越してきた。食べて寝て、で精一杯。片付ける気力まで残っていなかった。

 その感覚はよく分かる。世の中には、食べて寝る前に、掃除をするというほどのきれい好きな人がいる。でも「掃除しないと死ぬって訳じゃなし」と考える人間もいる。彼女も私もそのタイプ。ありがたいことに、日米の国境を越えて、このような似た者同士が出会ってしまった。

 しかし彼女は、根っからたくましい。経済苦を解消するために、不労所得を作ろうと考えた。それが、ルームメイト募集。

 そして自営業のさがである。仕事となれば、お金が絡むとなれば、目の色が変わる。ルームメイトを獲得するためなら、重い腰も軽々と上がる。こうして私と出会うまでに、なんとか、私の部屋だけが片付いている状態ができあがった。

 でもやるとなれば、徹底的にやる。いったん火のついた彼女は、ブルドーザーのように片付けに取り組んだ。家中が一歩、また一歩、きれいになった。11月のサンクスギビングデー、12月のクリスマス、と家に人が来る度に、「すごい、キレイになったじゃない。前は歩くのにも大変だったのに」と招待客から褒め言葉をいただき、それが彼女のやる気をますます盛り上げた。

 「そろそろ、変わらなきゃいけない時期だったのよね、私は」。クリスマスの後、お客さんが帰ったあとで、彼女はぽつっと言った。数年来のゴミを片付けたおかげで、今年のクリスマスは、家に友達を呼んでパーティーができた。ずっと関係の難しかった彼女のお母さんまで、なぜか、「泊まりに行くわ」といって、元・汚部屋だったリビングで一晩を過ごしていった。

 女にとって、整理整頓や片付けは、子どもの頃から「できて当たり前」とみなされる課題のようなもの。アメリカに来て、この家で暮らして、日本でもアメリカでも、女性が社会的に要請される「オーガナイズ能力」の圧力は、同じなのだなと実感した。(ちなみにビジネスシーンにおいては男性にもその能力が要求され、その要求水準は近年高くなっているといった記事を、日経トレンディ2010年10月号に書いた)。

 とにかく、彼女の転機に計らずも立ち会う結果になった。おかげで私もきれいな家に寄宿することができるようになった。ありがたいことである。



フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209500

問題少女 第1巻〜最終巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/215228


株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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