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> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.40・・・会話の手駒、まずは「日本ネタ」から(ライクス)- 2018.01.24(水) 10:00

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「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.40・・・会話の手駒、まずは「日本ネタ」から

ライクス

2018.01.24(水) 10:00

 なにか話さなきゃ、といつも強迫観念に駆られているのが、アメリカでの私の日常である。授業もしかり、また、アメリカ人のいる会合では、物を言わない存在はとかく影が薄くなるので、自分で自分の尻をひっぱたいてでも何かを言わないと、と思ってしまう。もうすこしリラックスして挑めないものかと思うけれど、小さな一歩でも、歩んでいる感覚がないとやっていられない性分なのだから、しかたない。

 気づくと、結局、乏しい単語力を酷使してなんとか自分の「意見」を公表するとなると、「日本ネタ」に頼る日々であった。

 「格差問題」の授業では、日本のホームレス事情やネットカフェ難民について説明。「世界の女性問題」の授業では、日本での自分の痴漢被害体験や経済評論家による女子高生のスカートのぞき疑惑事件、えん罪事件の続発など痴漢事情について開陳。

 これら「貧困問題」「女性差別問題」は、どの国にも通じる重い課題である。だから気合いを入れて発言すれば、それなりに、アメリカ人も耳を傾けようとする。そして私の視点、語り口が必ずしも「日本固有」の問題提起になっていなければ、「それはどの国でも起こっていることだと思います」等々、ビシっとつっこみが入る。こういった批評コメントは、受けるときついが、時間が経てば勉強になったと感謝の念を抱くことが多い。

 唯一、事情が異なるのが、空手クラブである。空手クラブで、定期的に練習に参加している日本人は私だけ。この事実が、日本の国際的地位の低下の象徴にほかならないと思うが、それはさておき困るのは、空手クラブにおける私の「日本では」発言は、ほかからのチェックが入らない、独壇場状態になってしまうのだ。

 ある時、稽古で先生が言った。「空手の『追い突き』では、右手を出すと同時に右足が、左手と同時に左足が出る。剣道もこれに近い動き方をする。これ、日本独特の動きだよね、ミホ」

 そう。わが出番である。

 「その通り。日本古来の歩き方は、右手と右足、左手と左足が同時に動くもので、ナンバ歩きと呼ばれています。体のエネルギーを無駄なく使う歩き方だと言うことで、ナンバ歩きを練習に取り入れてオリンピックでメダルを取ったランナーもいます」

 誇らしげに私が言うと、「ナンバアルキ? やってみよう」と先生が言い出し、しばし、稽古はナンバ歩きの練習タイムとなった。アメリカ人がえっちらおっちら、右、左、といいながらナンバ歩きをする様子は、写真を撮っておきたいほどおかしかった。

 しかしこういった成功例もあれば、中には、ノーチェックゆえの失敗例が生じることもある。

 私の所属するアメリカ道場の空手の組み手試合では、攻撃が「有効」と判定されなかった時、審判は「取りません!」と言う。日本の私の道場では「ノーカウント」と英語で言っていたので、「取りません」という妙に丁寧な表現に、私はくすっと笑ってしまった。

 「おかしい?」と先生に聞かれた私は、「オー、ノー」と困り顔をするアメリカ人のような大げさな態度で、言い放った。「丁寧すぎます。日本ではそうは言いません。ノーカウントです」

 へえー、とみなに受けた。でも家に帰って、なぜアメリカで「取りません」と丁寧語を使った審判用語が普及しているのか、その由来を知ろうとネットで検索してみた。

 すると。なんのことはない。「取りません」は、日本でも、団体によっては使っていたのである。これは恥ずかしい。いかにも「日本代表」を気取って意見した私であったが、シアトルの一部空手家たちに、誤った知識を伝えてしまったのである。

 その後、稽古で「取りません」談義をする機会はなく、私に訂正のチャンスは与えられなかった。日本ネタ開陳、はいい。でもあくまで「自信をもって語れるテーマ」に限った方がよいなと実感するばかりである。



フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
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下巻
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問題少女 第1巻〜最終巻
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株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。

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